【完】さつきあめ〜2nd〜
⑳
12月の始まり。
3回目の冬が巡って、数えきれないほどの大切な物を見つけては失って
何かを得るために何かを捨てて
雪の降らない、冷たい風を吹かせるビルの窓から見える四角く切り取られた空を睨む。
あの頃守りたい物は沢山あったけれど、それと同じくらい捨ててしまった物も沢山あった気がする。
イルミネーションに目を瞬かせて、街を歩く。
さーちゃんが夢を見てきた街は、いつの日にか自分の夢になっていったよ。
「よう、いらっしゃい」
「よ!」
「何だ思ったより元気そうじゃんか」
オープンしたばかりのトリガー。遥がいらっしゃいと一言告げると、奥に引っ込んでいった。
まだ人のいないお店で涼はカウンターに立って、グラスを磨いている。
「この忙しい時期にさぼりですか」
「ちゃんとお店の了承は得て来てますからー!!トリガーだってお客さん入ってないじゃんか
生ビールくださいっ!」
ふんと鼻を鳴らして涼はグラスにビールを注いで、こちらへ差し出した。
「12月だからな、うちの店だって8時過ぎから予約入ってるつの。
ただでさえ忙しいつーのに!」
カウンターに並んだビール2つ。
いただきます、も言わずにさも当然と言った感じで涼はグラスを合わせて一気に飲み込んだ。
「綾乃は連日同伴だアフターだって忙しそうだよ。
誰かさんに心配はするなって伝えとけだって」
「…綾乃ちゃん」
「で、お前は何やってんの?」
3回目の冬が巡って、数えきれないほどの大切な物を見つけては失って
何かを得るために何かを捨てて
雪の降らない、冷たい風を吹かせるビルの窓から見える四角く切り取られた空を睨む。
あの頃守りたい物は沢山あったけれど、それと同じくらい捨ててしまった物も沢山あった気がする。
イルミネーションに目を瞬かせて、街を歩く。
さーちゃんが夢を見てきた街は、いつの日にか自分の夢になっていったよ。
「よう、いらっしゃい」
「よ!」
「何だ思ったより元気そうじゃんか」
オープンしたばかりのトリガー。遥がいらっしゃいと一言告げると、奥に引っ込んでいった。
まだ人のいないお店で涼はカウンターに立って、グラスを磨いている。
「この忙しい時期にさぼりですか」
「ちゃんとお店の了承は得て来てますからー!!トリガーだってお客さん入ってないじゃんか
生ビールくださいっ!」
ふんと鼻を鳴らして涼はグラスにビールを注いで、こちらへ差し出した。
「12月だからな、うちの店だって8時過ぎから予約入ってるつの。
ただでさえ忙しいつーのに!」
カウンターに並んだビール2つ。
いただきます、も言わずにさも当然と言った感じで涼はグラスを合わせて一気に飲み込んだ。
「綾乃は連日同伴だアフターだって忙しそうだよ。
誰かさんに心配はするなって伝えとけだって」
「…綾乃ちゃん」
「で、お前は何やってんの?」