【完】さつきあめ〜2nd〜
「さ、さくらちゃん!!」
カウンターに立ってたマスターが困ったように名前を呼んで、カウンターの外までやってくる。
「お願い…します…。
何でもします…。
ゆりさんの力が必要なんです……」
灰色の床にぽたり、またぽたりと水の雫が落ちる。
小さな水玉を作って行く。
どんなに縋り付いても、どんなに泣いても、叶わない願いばかりだったけれど。
「止めてよ……。何であなたがそこまでする必要があるって言うのよ…」
顔を上げたら、どうしてゆりの方が泣いてるように見えたんだろう。ゆりは唇を噛みしめて、ただただわたしを見下ろしていただけだったのに。
「あたしは……
ゆりさんのようにすごい売り上げを上げられるキャバ嬢じゃないし
朝日が本当に困った時助けられる力なんてない…。
あたしはあなたに何も敵わない…!!
でも朝日が皐月にかけていた夢を知っている…。
それがあなた在りきだったということも。
だからあたしはゆりさんに頭を下げてお願いする事しか出来ない…!
お願い…お願いだから…なんでもします!だからお願いします…!!」