【完】さつきあめ〜2nd〜
掴まれた肩を振り切って、朝日を見つめる。
ずっと強い瞳をしてたくせに、なんて弱々しい顔をしてるのよ。あなたらしくもない。
いつだって強気で、誰よりも王様気取りなのが、宮沢朝日なんじゃない。
そうやって戦い続けてきたあなたをいつしかかっこいいと思うようになっていった。
そのあなたが、なんて顔をしてるのよ。

ネオンの光り続ける街の片隅で、あなたが夢を見続けるというのならば、それがわたしの夢にいつしかなっていった。

「何でもするって言ったのは、朝日じゃない」

「それは俺の問題だ」

「朝日の問題なら、あたしの問題だわ」

「お前がONEでゆりと争たって恥をかくだけだ!
それに…お前光の店に行かなきゃいけねぇんだぞ?!
ゆりと一緒に…そんな場所でお前が伸び伸びと楽しく働けるわけねぇ!!」

「あたしは光のお店では働かない。
それに皐月も絶対にオープンさせる。
ONEもシーズンズも…絶対に潰さない…」

「おまえ…!!本気でゆりを?」

わたしは朝日から背を向けるようにくるりと前を向いた。
分厚く雲のかかった空には、星さえも見えない。
けれど人は、希望を捨てれず、願わずにはいられないのは、何故なんだろう。

別にキャバ嬢になりたかったわけじゃない。
そこに強い夢があったわけじゃない。
お金が欲しかったわけじゃないし、地位が欲しかったわけでもなかった。
拘り続けたのは、朝日の店ということ。
わたし、あなたの夢は全部失ってしまえばいいと思っていた。けれどあなたに出会って、あなたの想いを知って、さーちゃんをちゃんと愛していたと知って


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