【完】さつきあめ〜2nd〜
「俺、さくらが好きなんだけど」
「え?!えぇーーー?!」
後部座席に座るさくらが、口角をあげて笑いながら驚いていた。
ふわりとした長い巻き髪。長い手足と、大きな瞳を瞬かせて、嬉しそうに笑っていた。それは出会った頃と変わらない微笑み。
だから俺は、さくらの本当の本当を知らない。
悩みがなさそうにいつも微笑んでいるさくらしか知らない。
俺がさくらと出会って、さくらの悲しんでいる姿とか、傷ついている姿を見たのは、結局さくらが死ぬまで一度しかない。だから俺はさくらのうわべだけ見ていたのだと、後になって知ることになるのだった。
悲しくても笑ってしまうのは、さくらの悪い癖だった。
「うっそだぁ~!」
「嘘じゃないって」
「え~!!やだぁ~!
光なんて女の子誰にでも優しいじゃ~ん!!それに好きなんて気持ち勘違いだって~!
ほんとやめてよ~!」
「いや、マジだから!」
「えぇ~!マジで困る!!」
そう言いながらも人が真剣な告白をしてるのに、さくらは笑ってばかりだった。
「さくら、好きな奴いんの?」
「うん!いる!」
即答だった。
そして、次に返ってくる言葉も何となく。
「光も好きだし!深海くんも好きだし、由真も好き!
お客さんも好きだし」
にこにこ笑って、さくらはそういう奴だった。