【完】さつきあめ〜2nd〜

由真は自分を中心に動くタイプで、さくらは周りと一緒に盛り上げていくタイプ。
いずれ兄貴が出す店ではママというポジションを持ちたいと言っていた。どっちかと言えばさくらの方がママタイプだと思っていた。
だから新店を築き上げる時に由真をママにすると言ったのは意外だった。でもこれが思っていたより成功した。
由真はキャスト時代は無断欠勤や遅刻を繰り返すタイプの不真面目なキャバ嬢だったけれど、ママという肩書きが与えられて人が変わった。
責任を与えられる事が向いている人間がいる。それを即座に見抜いた兄貴は、やっぱり俺なんかよりずっと商売人としての才能があったのだと思う。

「可笑しい事言ってないと思うよ。俺も時々さくらが分からなくなるし」

「あら、有明らしくない事言うのね」

「さくらは俺が一方的に惚れ込んでるだけだからね」

「あんなに仲良しなのに?」

さっきまで心配そうな顔をしてたくせに途端に意地悪そうな表情を浮かべる。
それでも由真はずっとさくらを心配していた気がする。

「たとえば、告白したのが深海でも同じだったんじゃないかって思う日がある」

その言葉には意外そうな顔をする。

「あ、いまのは一例を出しただけで…」

「分かってるわよ。まぁ深海さんがさくらを好きだったとしても、深海さんはキャストには手を出さないし
ぜっったいに自分の気持ちを隠すタイプだからね!」

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