【完】さつきあめ〜2nd〜

「ミエ、下らない喧嘩は止めて」

「でもっ!ゆりさん!!」

ゆりさん、と名前を呼んだミエを睨みつけると、ミエは一瞬にして怯んだ。

「下らない人間に時間使ってんじゃないって言ってんの。
それに弱い物が束になってかかってこようと、強い物には決して敵わない。
雪菜があなたにたとえ協力しようと、わたしの足元にも及ばない。
分かってるんじゃないの?今日1日だけであたしがどれだけ売り上げ上げてるかなんてわかってるでしょ?」

たった1日だけの出来事。
たった1日だけで、恐ろしい程のボトルの数。
ゆりは太客が多い上に、ひとりあたりが落とす売り上げがわたしとじゃ大違いだった。
これが本当のバースデー前後を予想すると、恐ろしくなる。ただの平日で、ONEのナンバー1はこれだけ売り上げるのだ。

「今日、逃げなかった事だけは褒めてあげる。
あたしに勝つなんて言葉にした事が恥ずかしくなって、てっきり逃げ出すと思ったんだけどね。
まぁ、あなたなんて何をしようとあたしには敵わない」

「………」

「だからあんたたちも下らない事してんじゃないわよ。
帰るわよ」

そう言って、ゆりは更衣室を出て行った。
ミエたちもばつの悪そうな顔をしてこちらを睨みつけて出て行った。
そして、傍観してたキャバ嬢もぱらぱらと更衣室から出ていく。

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