【完】さつきあめ〜2nd〜

…何も言い返せなかった。
ゆりの言ってる事は正しい。今日1日でゆりの実力は身に染みて分かったからだ。
内側から自信に満ち溢れた彼女を、ONEという舞台が更に輝かせる。
まるで大きなお城の嬢王様と言ったところで、その名に恥じぬ実力を持っている。
ゆり派じゃないキャストだって、きっと全員思っている。不可能だと…。自分さえそう思い始めてしまったのだから

けれど……彼女だけは違った。

「おー怖っ………」

静まり返った更衣室に、まるで音楽を奏でるように響いた高い声。

そこには着替えをとっくにすませていた雪菜が立っていた。

「雪菜さん!!!」

「怖いよね~…。嬢王って感じ…。貫禄ありすぎぃ!!!」

全然怖くなさそうにけらけらと笑いながら、雪菜はさっきまでゆりが座っていた椅子に座る。
彼女には言いたい事が沢山あったし、聞きたい事も沢山あった。何から伝えればいいか分からないほど。
でもそんな彼女を取り囲むように何人かのキャストが笑顔をこぼしていた。ONEはゆり派ばかりかと思ったけれど、相当キャストから好かれているらしい。

彼女たちと一言二言話してすぐに雪菜はわたしへと視線を移す。

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