【完】さつきあめ〜2nd〜
「勝てるって思ってます…。
ていうか…勝たなきゃいけないんです…
そんなに可笑しいですか?」
「本気で勝ちたいと思うのなら、利用出来るものは全て利用しなさい」
お茶らけていた雪菜が、突然真剣な顔になる。
笑っていたって、何を考えているのか分かんなくたって、この世界でトップを張って来た人。
一瞬にしてその場の空気を変えてしまう強さ。
このONEでずっとナンバー2にいた人なんだ。
「あたしはゆりにはONEで1度も勝てた事がないの。
勝とうとも思った事ないし。ONEはゆりがナンバー1で、嬢王らしく振舞ってりゃー丸く収まるって感じでね。
誰もここで働いていて、本気ゆりと勝負しようとするキャバ嬢なんていなかった…。知らなかったの…。
だから実際あたしはゆりが勝とうが、さくらちゃんが勝とうが大した興味はないかな?…でも無謀な勝負でも挑もうとする女の子は嫌いじゃない…」
「でもっ!それでもっ!雪菜さんのお客さんは雪菜さんのものです!」
「あらぁ、さくらちゃんがどんなに頑張っても、絶対に本指名をあたしから切り替えないお客さんだって多いのよ?
だからあたしの力を持ってしたって、あなたがゆりに勝てる確率は5パーセント上がったかなぁって感じなんだけど?」
「そ、そんなに………」
「それでもあなたは諦めない」
雪菜が真剣な顔をして、こちらを指さした。