【完】さつきあめ〜2nd〜

雪菜の信頼してるお客さんはある程度の事情を知っているのかもしれない。
元木に小さく頭を下げて、VIPを出ていく。
出た瞬間、黒服にお客さんの席がどうなってるのか気になってすぐに聞いた。

「さくらさん指名のお客様、5組被ってますね。
それに雪菜さんのお客さんでさくらさんを指名してる方も数組被ってます」

「雪菜さんは何て言っていました?もしどっか優先的に着いて欲しい卓があればそっちに着くけど……
こっちは、2階の10卓のお客さんから出来るだけ早く着いておきたいんだけど」

「それでだいじょうぶです!!雪菜さんのお客さんのところは元々いる仲の良いONEの女の子の場内が入ってますし
高橋店長からは、さくらさんの希望を出来るだけ優先してくれって言われてます!
あと、1階2卓のお客様からシャンパンが出てます!」

「おっけ!じゃあ2階行ってから、1階に行きます!
少し時間が経ったら抜きに来てください!
あと、双葉からきてるお客さんは出来るだけ愛ちゃんとるなちゃんヘルプでお願いします!」

「分かりました!」

目が回るくらい忙しかった。
けれど不思議な事に、ずっと立ちたいと思っていた舞台は、わたしに気持ちの良い疲れを見せてくれる。
ゆりの事があった。けれど、ONEに来てから思っていたよりずっと仕事を楽しめている自分がいる。
1分、1秒とも時間を無駄にしたくない。
これだけの人数をわたしひとりで満たされた時間を与えるのは不可能だ。
だけど、ほんの少しでもわたしと過ごす時間を満足だと思ってもらえるのなら、わたしがこの場所で走り回る意味はきっとどこかにあるはず。

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