【完】さつきあめ〜2nd〜
年末の忘年会も相まって、ONEには連日お客さんが押し寄せた。
未だかつてない指名数。雪菜や女の子たちの助けもあって、わたしは確かにゆりに追い付いてきた。確かな手ごたえを感じてきた。
追いかける事を意識して、手の届かなかった物が後少し手を伸ばせば届く感覚。確かに気づいていた。
けれど、ゆりはまだ本気を出していなかったように思う。全てはバースデー前後。2週目の木曜日から3日間が、本当のゆりのバースデー前後にあたる。
最終日は金曜日。
彼女はバースデー月にあり得ない売り上げを毎年叩き出すらしい。
恐ろしかった。けれど、わたしのバースデー月さえ、ゆりに勝てた事はない。だからこそ、不可能なんてないんだと思っていた。
「ん~…何で明美さんってあたしに似合う髪型が分かるんだろう……」
あたしは毎日誰より先にONEに着て、売り上げ表を確認して、1番にセットに入る。
売り上げ確認は、シーズンズにいた時から欠かさずにしている日課でもあった。
今日も明美は器用に髪をセットしてくれた。
同伴前に彼女と話す事が、1日の始まりでわたしにとっての少しの楽しみでもあった。
「任せて貰えて何より。
それよりさくら、すっごいじゃない!!あのゆりの売り上げと競える女の子なんて雪菜以外に見た事なかったわぁ~!」
「それは雪菜さんに協力してもらってもあって。それに明美さんも毎日あたしを綺麗にしてくれるから」
「あんたって人たらしねぇ…」
感心したように鏡越し、明美が言った。