【完】さつきあめ〜2nd〜
「小林さんが?!」
お父さんみたいだった、少し頼りなげな小林が?
そう思うと笑いがこみあげてくる。
「おぉ、ああ見えて小林さんってさくらが大好きでなぁ~」
「えぇ?!全然そんな風に見えなかったよ?!
小林さんって女の子に舐められてあたふたしてるイメージしかないし、女の子おべっか使ってばっかだったじゃん!」
「意外だよなぁ。さくらが双葉に行った時もすげぇ悲しんでたし。
さくらちゃんは優しかったなぁって…!さくらちゃんとまた働きたいなぁっていい歳したおっさんが俺に言うんだぞ?」
「マジ笑える!でも小林さんいい人だったしねぇ~!」
「それにシーズンズの店長は誰よりもさくらびいきが酷いだろうしね」
ちらっと視線を送る先に、深海の姿。
影が薄すぎて全然気づかなかったなんて、本人んは言えない。
深海は隅っこで小さくなってお酒を飲んでいた。
「あ!深海さん!」
「お前絶対気づいてなかっただろう…」
「いやー…そんな事ないですよ!
深海さん!久しぶりですね!」
高橋とはるなたちが話している間に、静かに深海の横に行く。
元から笑う人ではなかったけど、相変わらず無表情で何を考えているか分からない人だ。
そう、この人は出会った時からずっとそういう人だった。でもあまり自分の感情を出さないけれど、すごく優しい人だっていうのを知っていた。
わたしに、さくらという名前を与えた人。