【完】さつきあめ〜2nd〜

「何かごめんね。バタバタして」

「つーか、だいじょうぶか?ひとりで帰れるか?」

「やだなー、子供じゃないんだからー。
その辺でタクシーでも拾って帰るよ。
それより涼のお客さんも沢山来てるんでしょ?忙しそうなのにごめんね」

「いや、別にそれはそれでいいって。
俺よりさくらのがしんどいだろーし。
俺なんて祝われて出ていく側だからな、気楽なもんさ」

トリガーの入り口まで涼が送ってくれた。
トリガーで初めて涼に会ったのは、凛のお陰だったなぁなんてぼんやり思い出していた。
そう考えれば、人との出会いって奇跡みたいな偶然で溢れている。
出会いすれ違うだけの人もいれば、こうやって強い絆を結んでいく事だってある。

「じゃねぇ!!」

「あ!さくら!」

振り向いたら、涼は照れくさそうに頭を掻いていた。

「来週は、ONEに飲みに行くわ」

「は?!」

「自分の金でな」

その涼の言葉にぷっと吹き出してしまう。

「ONEは高いよぉ~?」

「だからキャバ嬢っつーのは嫌いなんだよ」

「あはは、嫌いなキャバクラに自分のお金で飲みにくるなんて超ウケる」

「だから言っただろう。キャバクラは嫌いだけど、お前は嫌いじゃないって」

「…ありがとう」

ぶっきらぼうな涼の優しさが嬉しかった…。
本当に出会えて良かった人だ。

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