【完】さつきあめ〜2nd〜
タクシーが横付けされている道で、立ち止まりこちらを見つめてきた人。
華奢なピンヒールとファーのついた白いコートを着たいつかどこかに置いてきた過去だった。
「さくらちゃん…!」
「…菫さん…」
弱い自分を見せた。弱い自分に気づいていた。だからこそ、目を逸らす事しか出来なかった。
だってあの頃は、あなたにも嫉妬していた。
朝日に必要にされている、あなたに。
ずっと呆れられていたと思った。だから彼女がわたしに声を掛けてくれるなんて意外だった。
「久しぶりね。いま帰り?」
「はい、タクシー乗ろうかなって」
「あ、じゃあ相乗りする?送って行くわよ」
その言葉にふっと気持ちが軽くなった。
「送って行くって。菫さん、男前…」
「なぁに言ってるの?
どぉせ帰り道なんだから、乗って行きなさいよ」
「ありがとうございます…。じゃ、遠慮なく……」
ふたりでタクシーに乗り込む。ふっと菫の懐かしい香りが車内を包み込んでいく。
どちらからともなく話し始めた。
「小林さんがえらくあなたを心配してたわ」
「あぁ…。菫さんは年明けにONEに移籍予定だったんですよね」
華奢なピンヒールとファーのついた白いコートを着たいつかどこかに置いてきた過去だった。
「さくらちゃん…!」
「…菫さん…」
弱い自分を見せた。弱い自分に気づいていた。だからこそ、目を逸らす事しか出来なかった。
だってあの頃は、あなたにも嫉妬していた。
朝日に必要にされている、あなたに。
ずっと呆れられていたと思った。だから彼女がわたしに声を掛けてくれるなんて意外だった。
「久しぶりね。いま帰り?」
「はい、タクシー乗ろうかなって」
「あ、じゃあ相乗りする?送って行くわよ」
その言葉にふっと気持ちが軽くなった。
「送って行くって。菫さん、男前…」
「なぁに言ってるの?
どぉせ帰り道なんだから、乗って行きなさいよ」
「ありがとうございます…。じゃ、遠慮なく……」
ふたりでタクシーに乗り込む。ふっと菫の懐かしい香りが車内を包み込んでいく。
どちらからともなく話し始めた。
「小林さんがえらくあなたを心配してたわ」
「あぁ…。菫さんは年明けにONEに移籍予定だったんですよね」