【完】さつきあめ〜2nd〜
「そうね。小林さんは相変わらず菫ちゃんがいなくなったら困るよぉ~って泣き言言ってたけど
さくらちゃんがいなくなった日も同じ事言ってたような気がするわ」
「確かに!あの人そういうところありますよね!」
「まぁ…移籍するも何もONE自体がどうなるか分かったもんじゃないけど……」
「それは……絶対だいじょうぶです!
菫さんは年明けから約束通りONEで頑張ってください!朝日も菫さんには期待してるし!」
その言葉に菫はふっと笑みをこぼした。
「言い切るのね。
どの店舗でももっぱら噂よ。ONEのゆりとさくらちゃんの事」
「そりゃー…そうですよね」
「偉く無謀な勝負をしようとしてるじゃない」
「あはは…。でも勝ちます。色々な人の想いを背負ってるし。
朝日の為だけじゃなかったんです…。ずっと朝日の為だって思ってたけど
それぞれに七色グループを守りたいと思っている人たちのため……」
タクシーの背に菫は寄りかかり、珍しくスッと素に戻る瞬間があった。
お店にいる時の背筋の伸びた完璧な菫とは違っていた。
ふぅと息を小さく吐いて、わたしの顔を覗きこむ。その瞳には出会った頃のような優し気な笑みがあった。
「…あたし、ゆりさんだけじゃなくて…菫さんにも嫉妬してたんです……」
その言葉に菫は目を丸くした。