【完】さつきあめ〜2nd〜
「信じなさいよ。自分を……。
今日はあなたの気持ちを聞けて安心した…
立場が違えど、朝日の店を守りたい気持ちならあたしも同じだわ……。
昔のあなたは朝日と光くんの間をふらふらしてイライラもしたけど、今のあなたはあの頃とは違う…」
そんな風に菫に言ってもらえるほど立派な人間ではなかった。
タクシーから降りて、マンションに着いてまだ暗い街並みをベランダから静かに眺めていた。
ひとりじゃない。そう思って見つめてきた光り。
光と肩を並べて見つめた、別々に見えていた光り。
沢山の出来事を、ただ何も言わずに見つめていた光りの中に、小さな悲しみや絶望があった事。
ここに立ち続ける事を後悔した日はない。
けれども後悔した夜はあった。
誰の中にもあった弱さが自分の中にあった事。頼ってはいけない温もりを求めた日を。
けれど寂しさや悲しみは違う物で代用したとして、埋まらなかった事。それどころか、時間が経てば経つほどに、あの選択をせざるえなかった日を何度後悔したか。
この先、ゆりにもしも勝てたとして、朝日はもうわたしに、あの屈託のない笑顔を向けてくれる事はない。
立ち止まっちゃいけない日々を生きているのに、時としてこうやって立ち止まり、このネオンを見て、ひとりぼっちだと感じてしまう
今なら、あの日光が言った言葉が少しだけ理解出来るような気がするんだ。