【完】さつきあめ〜2nd〜

「だいじょうぶ。
いま1番不安なのは美月ちゃんでしょ?それなら2人には美月ちゃんについててあげてほしい…」

愛とるなが、布団を被った美月へ視線を移す。
シン」と静まり返る病室で、無言の時間が少しだけ続く。
美月には両親がいない。こんな時に家族に頼れない。それならば美月をよく理解してくれる2人が側にいた方が絶対に安心だ。
何より心に負った傷の方が心配だった。
ゆいの事があった。
ゆいも同じような事件に巻き込まれて、彼女は店を辞めて、キャバクラ自体を続けていくか分からないと店を去った。
それくらい、恐ろしい想いをした後だ。ひとりにさせられない。
この時期に愛とるなに抜けられるのは正直きつかったけれど、こっちは何とかなるだろう。

暫く沈黙が続いて「じゃあ帰るよ」と椅子から立ち上がろうとした時だった。


「待って!!!」

美月の大きな声が病室内に響いた。

「愛…るな…
少しだけさくらさんと話をさせてほしい……」

意外な言葉だった。
てっきり美月はわたしに拒否反応を示してると思ったし
会いたくなんかないって思っていた。
だってわたしが美月を心の底では嫌っていて、美月に宿る命を許せなかったのだから。
勢いでここまで来てしまったのはいいけれど、布団で顔を隠す美月を見て、少し後悔してしまったから。

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