【完】さつきあめ〜2nd〜
「どうしてですか……どうして…あなたは……」
「え?」
一言一言を考えるようにゆっくりと喋る美月は、やっぱり捨てられた子供みたいな表情をする。
いつか朝日も見せた表情に少しだけ似ていた。
「どうして…優しくしてくれるの?」
「優しくって……。
別に優しくしてるわけじゃないんだよ…。
佐竹さんが危ない感じのお客さんだってことは何となく察しがついてたし…
それに愛ちゃんやるなちゃんから電話がかかってきたら心配になっちゃうのは当たり前じゃない…?」
「当たり前?」
訳が分からない、と言った感じで美月は目を丸くして首をかしげた。
「さくらさんが言う…当たり前や普通って言葉…
あたしには分かんないんです…。嫌味とかじゃなくて…本当に分からない。
だからあなたがあたしにこうやって優しくしてくれるのも…本当に分からないの。
でも本当は分かってるんです…。さくらさんがあたしをただただ心配してくれてるって事は、何が目的とかじゃないって事も
あなたが、ただ優しい人だって事も昔からずっと知っていた…」
ヒクッと美月の喉が僅かに鳴ったのが分かった。
そして大きな瞳にいっぱいに涙をためて、我慢していた事も。