【完】さつきあめ〜2nd〜
「でも分からないのは、何の見返りもなく優しくされた事がないから。
誰だって人間は皆自分の事ばかり考えているから、人は何か見返りがないと人に優しく出来ないから。だから、見返りがないとあたしも誰にも愛してもらえない…
あたしが…何も出来なかったから両親に捨てられた……」
「美月ちゃん……」
美月がここまで感情をあらわにするのは初めてだった。
そして小さな子供のように泣きじゃくるのが、本当の美月の姿だった。
「さくらさんの事ずるいって思ってた…。
自分から何もしなくてもお客さんもいて…皆から好かれて
宮沢さんに愛されてるあなたがすごくずるいって思った……
それでもさくらさんはこんなあたしにも優しくって…やっぱり育ってきた環境が違うからだよ、とか
元々人間として出来てる部分が違うんだよって自分で自分に言い聞かせてきたけれど…それでもずるいって思う気持ちは止められなかった…。
さくらさんはきっと曇りのない心を持ってるから、あたしの気持ちなんて分かんないって思ってた…」
美月の言葉が深い深い場所へ突き刺さっていく。
曇りのない心?この心のどこが?
わたしは美月の中に芽生えた小さな命さえ許せなかった…心の狭い、美月と同じ誰かをずるいって気持ちをずっと持って生きてきた人間なのだから。