【完】さつきあめ〜2nd〜
「昔さ、美月ちゃんに誠意って何ですかって聞かれた事があったね…」
「え?」
「あたし何も反論出来なかった…。
美月ちゃんの言う通りキャバ嬢としてならやってる事は同じで、お金にはやっぱり綺麗も汚いもないって…」
「あんなの…ただの屁理屈ですよ…。
それでもさくらさんのお客さんはあたしのお客さんみたいに逆恨みするような人もいなかったし
それはさくらさんが出来た人間だからですよ。ひとりひとりに誠意を持って接してるのがお客さんにも伝わっているからなんです。きっと」
美月の言葉に首を横に振る。
「ううん。違うわ。
あたしは美月ちゃんが思ってるより人間が出来てるような人じゃないし
美月ちゃんみたいに人をずるいと思う事だって沢山あるし、人を妬んだり僻んだりするような人間なのよ。
だから美月ちゃんは自分の事を普通じゃないって言うけれど、あたしから見たら美月ちゃんは全然普通の女の子なんだよ。
あたしね、ずっとあなたが羨ましかった…」
「あたしが?」
「うん。それにあなたの中の命がすごく憎かったし、産まれなければいいって思った…。朝日があなたを大切にする事も許せなかったし、朝日があなたを捨てきれない事もずっと許せなかった…
だからあたしと朝日がダメになったのは美月ちゃんのせいなんかじゃないよ?
あたしが朝日の全部を受け入れる器がなかっただけなの……」