【完】さつきあめ〜2nd〜

「それ…本人に言ったの?」

「はい…。でも蓮はすぐに否定して、本当に俺の子?って言ってきて全然信じなかったし…。無理もないと思うんですけど…。
それどころか子供なんて嫌いだし面倒も見れないしおろせよって…。
別に蓮が好きだったわけじゃないし、でも誰の子供であろうとあたしの子であるのは間違いないんだから産もうって…
それでもやっぱりひとりは辛くて…あたしみたいな人間…子供なんて育てられないって…絶対自分の親と同じ事をするって
だから宮沢さんやさくらさんにあんな嘘までついて…あたしは酷い事したんです……」

その怒りは全然別の場所に向いていた。
もちろん、嘘をついた美月へ、じゃない。

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

子供のように泣きじゃくる美月を、誰が責められると言ったのだろう。
ふつふつと怒りがこみあげてきた。
それは美月に対してではなく、女をお金や物でしか見ない男にだろう。

この夜に生きるもの、誰かが言っていた。
ホストが頂点だと。
一見煌びやかに見える世界線の中で
お昼に働く人間や、はたまた飲食を生業としない人間、それがキャバ嬢へお金を落とす。
キャバ嬢や風俗をしている女の子がホストに行く数は少なくはない。
キャバ嬢から風俗に落ちるなんて話も珍しくない。
キャバ嬢はどこまでいってもホストには勝てない。そう言われる理由を
お金の最終受け皿が、ホストになってしまいがちな夜の世界。

寂しさや虚しさを埋める疑似恋愛なら、わたしたちはホストにはかなわない。
大半のホストが枕営業をしている。わたしたちが超えにくい一線を彼らは遥かに超えていく。
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