【完】さつきあめ〜2nd〜

SKYには何回か付き合いで来た事はあったけれど、こんな時間に来るのは勿論初めて。
高橋にお店は遅刻すると言ったら、こんな時に正気かよ?と呆れられ、止められた。でもこうやって頭で考える前に行動してしまうのは悪い癖だと思う。
いま、目の前にある事をちゃんとしなくてはいけないのに、お店では自分の事を待っていてくれるお客さんが沢山いるのに…
分かっているのに……。

派手な装飾と、頭が痛くなるほどの音楽の中で、何かが麻痺していくようだった。
だから多くの人が、訳も分からずにこの場所で大金を落としていくのか……。
それでもSKYのナンバーのパネルで煌びやかな光を放っているのは蓮だった。
美しい顔で、にこりと笑みを落とす。
わたしはこの人がどんな人かなんて知らない。自分が知らない人をどうこう判断するわけではない。でも美月を傷つけたのは、こいつだ。

「おい………仕事は?」

拓也に連絡すると、彼は出勤時間が違うのに事情を聞いてお店にやってきてくれた。
そして、ナンバー1は基本的にオープンから出勤なんてしない。それを何とかしてくれたのも拓也だった。

「いま、七色大変なんだろ?
それにONEにいるんだろ?噂は何となく聞いてるよ…。
こんなところに来てる場合じゃないだろ」

指名ホストは拓也。
でも、この人が蓮に売り上げで敵わないのは何となく理解出来る気がする。
運が良かった事に、わたしの指名ホストは優しい人間なんだろう。
でも今から来る男は、きっと拓也とは本質が全然違う。

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