【完】さつきあめ〜2nd〜
悪びれもせずにシャンパンを注文し、コールもなしに運ばれたドンペリを蓮は器用に空けた。
そして細く長い手でそれを持ち、自分とわたし、そして拓也のグラスに注いだ。
薄紅色の液体がシャンパングラスの中で水玉模様を作る。蓮はそれを一気にグイっと飲み干した。


「クソまずいよね」

そしてにっこりと嘲笑う。

煙草に火をつけて「メロンソーダのがよっぽど美味しいよ」と楽しそうに言う。

「話っていうのは美月ちゃんの事なんですけど……」

美月、と名前を出しても蓮は顔色ひとつ変えることなく「それで?」とこちらへ聞き返した。

「美月ちゃんが妊娠してるってのは知ってますよね?」

「そうみたいだね」

顔色ひとつ変えず、自分には何も関係ないって顔をする。

「美月ちゃん、病院に運ばれたんですよ」

「へぇ」

「お客さんにストーカー紛いの事されて
階段から突き落とされたって!」

「ふぅん。それは知らなかった」

「何でそんな他人事なんですか?
お腹の中の赤ちゃん、あなたとの子供でしょ?」

「証拠は?」

「美月ちゃんが嘘をついてるって言いたいんですか?」

再び乱暴にシャンパンをグラスに注ぎ、一気に飲み干した後テーブルに置いた。
連のしている指輪とシャンパンの持ち手が重なって、キーンと涼しい音が店内に響く。

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