【完】さつきあめ〜2nd〜
「俺は美月に子供をおろしてくれと言った。
金も渡した。
それで?お客さんに階段から突き落とされて、子供は?」
「……赤ちゃんは無事です」
あーあー、と笑いながら呟いて「それは残念だ」とはっきりと言い放った。
人としてどうかとは思う。それでもこんな男にでも依存しなくては生きていけない人間が沢山いるから、この人がここでは王様だったのだ。
「まぁ君ってこういう事ぺらぺら喋る人間じゃないだろから言うけどさ
美月とは昔からの付き合いで、あいつがまだガキだった頃でさ…
高校も行かずに風俗やってるような女だったけど、顔だけは綺麗な奴だからさ
別にホストとして美月を利用した事はないよ。
だからって人間としてあいつを好きってわけでもないけど。
俺は金になる女だったらどんな女でも抱くし、金にならなくても綺麗なら抱く。
でもそれって美月も同じでしょ?あいつは男なら誰でもいいような女なんだよ。それがいきなり妊娠したとか言われて、あ、はいそーですかとはなんないでしょ?」
「それでも美月ちゃんは子供を産むって言ってる!」
「だから!」
蓮はイライラしたように拳を作って、テーブルを強く殴りつけた。
でも顔はにこにこ笑っていて、それが余計に怖かった。
「だから何だよ。
仮にそのガキが俺の子供であろうが、俺には関係ない。
美月が勝手に産みたきゃ産めばいいし、育てたきゃ育てればいい。俺には何の関係もない。
もっとも、親に捨てられたような美月がまともにガキを育てられるわけがねぇんだ」