【完】さつきあめ〜2nd〜
「さくらがゆりに負けるなんていまは思っちゃいない。
…ずっと信じてなかったけどな。最近のさくらを見て、あいつなら何かを変えてくれるんじゃねぇかなぁって思ってる。
けれど俺はお店のオーナーとしての責任つーのがやっぱりある。
俺ひとりなら何とでもなる。だから七色の従業員の事はお前に頼みたい」
「でも朝日っ!
朝日はどうするの?
七色がなくなったら今までみたいな生活は出来なくなるのよ?!」
兄貴はふっと笑い、綾の髪を撫でた。
綾は小さい頃のまま、お店では絶対に見せないような顔で泣きそうな顔をしていた。
「俺はどーとでもなるって言ってんだろ。
それに俺が本当に欲しかった物は大きな会社でも金でも地位や名誉でもなんでもねぇんだよ…。
そんな上辺だけの物に振り回されて、本当にバカみたいだよな」
バカみたいだよな。そう言っていた兄貴の顔が今までに見た事がないくらいすっきりとしていたような顔をしていて
まるで今までに見てきた兄貴とは別のようで
途端に自分が目指していたものが分からなくなる。
「何となく経営をして、それで成功をして、でも気づいたら手に残ってる物なんて少ししかなくてさ…
自分の店を持ちたいって目標は、親父に対する対抗心みたいなものだったし
実際は俺より光みたいな奴の方が経営に関しては向いてると思う」
「俺が……?」