【完】さつきあめ〜2nd〜
「ずっとずっと暗闇のような世界にいて、自分の存在価値なんて見いだせなかった。
でもこの家に来て、初めてお前に出会った時あの日から俺の中の光りはお前そのものだった……
俺はずっと光の持っている物が欲しくて、お前の正しさにさえ嫉妬するくらい憧れていた」
兄貴の言葉に、思わず口元をおさえる。
それは………
「お前が大切な家族だからって俺に言ってくれて、俺を守りたいって
あんな優しい顔で笑うから。俺は生きてこれたんだと思う。
お前はいつだって真っ直ぐな心で、俺を認めてくれたから。
…それなのに、俺はお前の大切な物を奪う事しか出来なくなって…
本当に苦しい想いをずっとさせてしまったと思う。
光、本当にごめんな……」
見開いた瞳。
閉じれなかった。動く事が出来なかった。
その瞳を閉じてしまえば、涙が止まらなくなることを知っていたから。
正しくなんかなかった。真っ直ぐでも、綺麗な心でもなかった。それなのに、この人は俺を光りだと言ってくれるんだ。
瞬きをした瞬間、涙が頬を伝ったのを感じた。
目の前が途端にぼやけていって、その場に崩れ落ちるように溢れ出した涙が止まらなかった。