【完】さつきあめ〜2nd〜
「綾もおかえり」
「お父さん、ただいま。さっきまで光もいたんだけど」
「光とは少し前に会っているよ。
それにしても朝日、背が伸びたな」
「背なんか……ずっと前から高い…」
それ程の時間が流れていた。
俺より大きかった父親をいつの間にか抜かしていたなんてそんな事も知らなくて
「光から朝日が来ると聞いていて、今日は早めに仕事を切り上げてきた。
今日は何か食べていくかい?」
「いや……仕事が忙しくてそれどころじゃねぇし」
「あぁ、お前が仕事を頑張ってるのは何となく分かってるよ。
本当にすごいじゃないか」
「まだ、あんたの方が凄い…」
「いやいや私はもう結構仕事は部下にまかせっきりだよ。
綾は?今日は泊っていくのかい?」
綾は少し考えた後「泊る」と小さく呟いた。
俺の中で綾はずっとキャバ嬢として生きてきた姿しか見ていなかった。
でも家に帰れば綾もまだまだただの女の子だということ。こいつは誰よりも早く大人にならなきゃいけないって考えてきたような奴なんだ。
俺と光がしっかりしていなかったせいで。
綾に苦労ばかりかけてきた気もする。
綾には普通の女の子として、大学に行って、普通の仕事に就いて欲しかった。