【完】さつきあめ〜2nd〜
この人の本音を聞きたいといつも願ってた。
どういう経路で母親に出会い、どうして俺が産まれたのか知りたかった。
そして、俺は本当に愛されていたのか、なんて子供染みた事を……。こんな年齢になるまで、愛情を求めるなんてどこまでも俺は幼いままだったな。
けれど自分の中で消化されぬ想い。
そしてどんな言葉を聞いても納得出来ると思ったし、許せないのだろうと思っていた。今はまだ…。
でもいつか…いつか時間が過ぎゆく中で子供だった自分を、認めてあげられる事が出来る日が来るのなら
俺はこの人を許せるのかもしれない。
失った物は2度と戻らない。
母親も、俺が過ごした幼少期も、ごくごく普通に与えられるはずだった愛情も
けれども形は違えど、父親であるこの人も失った物を後悔して生きてきた人間のひとりだった。
そしてその後悔が今も消える事がないという事は、この人の表情を見れば分かる。
俺はそうなりたくはない。
たとえ過去は取り返せなくても、いつか許せるように。
許したいと思えたのは、やっぱりさくらに出会えたからで、会わなければ、俺は一生この人と向き合おうとはしなかっただろう。傷つくのが怖くて、怯えている子供のような俺に
傷ついてもどこまでも立ち向かっていくさくらの姿は、やっぱり眩しかった。