【完】さつきあめ〜2nd〜
でも、もうわたしの手から離れて行った大切な物。
「こんなに惨めでバカみたいでも…朝日がいない世界でなんか生きていけないのよ……」
「ゆりさん…あたしはもう朝日とは一緒にはいられません。
そうはっきり言われたし、朝日はもうあたしを許してはくれないと思います」
わたしの言葉にゆりはハッと顔を上げて
その指の隙間から、涙が流れていた。
やっぱり泣いても美しい彼女が大きな瞳を揺らして、わたしを見つめている。
その感情に流されないように、ぐっと体に力をいれて前を向く。
さっきまでアルコールのせいで視界はゆらゆらと揺れていた。けれどもうハッキリと前の景色が見える。
何があっても揺れてばかりで生きて行かない事。全てを受け入れて、生きていく事を決めたんだ。
真っ直ぐ見据える世界の中で、守りたい物はひとつだけハッキリしていたんだ。
わたしは強くなる。
守られるだけじゃなくて、誰かを守れるくらい。
「けれど、朝日があたしと一緒にいる未来がなくても
あたしはこの勝負に勝って、絶対に七色グループを守って見せます」
「なんで……」