【完】さつきあめ〜2nd〜
「皆、寂しいね」

「人の寂しさにつけこむ仕事だと俺は思ってるね」

「そう考えたら最悪な仕事だよね…ホストの事言えないじゃん」

「でもその夜がお前たちの存在が助けになったり癒しになったりする事だって沢山ある。
俺は、だからキャバ嬢を尊敬してる。
お前だって、ゆりさんだって、雪菜さんだって、ONEにいる女の子たちを尊敬する」

「あたしも誰かのそんな存在になれてるのかな?」

「なれているさ。
少なくとも俺は、お前に感謝してるし、お前を尊敬してる」

「ふふ、ありがとう」

床のガラスを片付け終えた後、高橋はゆりとわたしの売り上げ表をテーブルに置いた。

「ゆりさんがああまで感情をあらわにする人だとは思わなかった…」

わたしとゆりの売り上げの差が、数10万になっていた。
それは明日1日でいくらでもひっくり返せる僅かな差だった。
あんなに開いていたのに…。決してゆりが手を抜いたわけではない。
バースデー2日目、今日の売り上げ。このバースデー期間中に、たった1日で、わたしはゆりより大きな売り上げを出していたのだ。
でもそれはわたしの力ではない。


わたしの言う通り雪菜やONEの女の子たちが動いてくれたお陰だったし
ゆいや凛が惜しみなくお金を使ってくれた。沢山の人の応援の上で成り立っていた売り上げだった。

でもそれを悲観したりするのはもう辞める。手に入れたかった物が手に届きそうな場所にあるのに、それを掴みにいかないなんて弱音は吐いていられない。
確かに全てではないけれど、ここに記された記録はわたしの物なのだから。

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