【完】さつきあめ〜2nd〜

「ゆりさんはいつだって余裕って顔をして笑っているような人だから」

高橋はソファーに寄りかかり、スーツから煙草を取り出して火をつけた。

「だから今日のゆりさんは全然ゆりさんらしくないと思った。
自分の指名客に集中するんじゃなくて、お前の売り上げの事ばかり気にしてた。お客さんじゃなくて、お前の姿ばっかり目で追っていた。
逆にさくらは今日どの卓でも100パーセント売り上げに集中してたし、ちゃんとお客さんを見てた。
お前はやっぱり土壇場に強いタイプだな」

「自分のバースデーでもこんな売り上げ出した事ない…。
やっぱり周りの人の力のお陰だよ」

「でも、お前に協力したいと思うキャストがいることはお前の人徳だったり、ラッキーだったりもする。
さくらじゃなきゃ凛さんもゆいもこの勝負には加担しなかっただろ。お前はTHREEの頃からふたりの事を気にかけていたし、ライバルっていったっていつだって助けてきただろう。
それにONEのキャストの子たちも協力的だよ。最初は雪菜さんが言うならって感じだったけど、女の子たち何人か自らさくらの協力したいって俺に言ってきてな。
やっぱりそれも人徳だろう。さくらは昔から変わらずにお店の女の子に優しいから。
それとは逆に、ゆりさんは何かちぐはぐなんだよな……。ミエさんだってゆりさん派閥なのに、最近何か上手くいってないみたいだし、やっぱりチームワークっつーのは大切だよ。そう考えるとゆりさんは独善的すぎる。
まぁONEっていう店はゆりさんの独善的なところで成り立っていたような場所だからね」


< 698 / 826 >

この作品をシェア

pagetop