【完】さつきあめ〜2nd〜

「…ゆりさんは強くあろうとした人だからだよ。
ゆりさんみたいなタイプは周りに自分のお客さんを任せられないんだよ。全部自分でやらなきゃって考えて、行動して、だからそれが時に独善的に見えてしまうけど、あの人は責任感のある人よ。
ただの自分勝手な人だったら、ONEは成り立っていなかっただろうし、女の子たちもゆりさんについていかないと思う。
…でも強くみえたって本当に強い人なんかじゃない。そんなに強くなれる人なんて、きっといない……」

「まぁ、さくらも強い人間ではないもんな」

高橋が吐き出した煙草の煙が、高い天井をゆらゆら揺れてやがて消えていく。
そう、わたしは強い人間ではない。
そんな自分が嫌で嫌でたまらなかった時もあった。

「でもお前は……強い人間ではなかったけれど
俺が思っているより、弱い人間でもなかった。
いつか深海さんが言ってた。深海さんも俺もあの頃は笑い話として聞いていたけれどさ
有明さんはさくらが来てから、さくらはいつかゆりを追い越すキャストになるって……あの頃は夢物語だと思って聞いていたけど
あの人は何でそんなに分かるんだろう」

「光は……光が凛さんとゆいに連絡を取っていて、ONEであたしとゆりさんが勝負してるって伝えてくれた。
どうして光はそんな事を……」

「有明さんは辛いんじゃないかな…。
確かに自分の手で宮沢さんを陥れたわけだけど…本当はそんな事をしたくなかったって気持ちもあの人の中にはあって、もしかしたらさくらがゆりさんに勝って、自分の夢をさくらが壊してくれる事を待ってるんじゃないかな?」

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