【完】さつきあめ〜2nd〜
「さくらは強い人間じゃないからだって。
だから人の弱さも分かるし、弱い人間の気持ちも理解してあげられるから、人から助けられる人間になれるって。
ナンバー1は孤独に見えるかもしれないけど、孤独な人ではナンバー1になれないって言ってたって。
なんだよそれ、ってあの頃聞いてたけど、確かに今のさくらを見ていれば、有明さんの言ってた事も分かるような気がする。
何かお前はあれだな。いるだけで自分の空気を作っていってしまうっていうか、そのお前の空気が周りを巻き込んでいって、フロアに良い風が吹いていって、雰囲気を一気に変えていってしまうようなキャストだよ」
高橋の柔らかい微笑みが、揺れる。
「つーかさ、お前、もしもONEでナンバー1になったらその先どーすんのかって決めてんのか?」
「全然決めてない…。
皐月の看板もゆりさんになって欲しいし、新しいONEだって菫さんがきっと何とかしてくれる。
そもそもキャバ嬢を続けていく意味がない…」
「そうだろうとは思っていたけど
さくらはそこまでこの仕事に熱意があるって感じはしてなかったし」
結局わたしの復讐は果たされない。当初の目的は何の意味も持たなかったから。
だから今のわたしの叶えたい願いは七色グループの継続であって、じゃあその先は?と聞かれれば分からない。
この世界の頂点に立ち続けたかったわけでもなかったし、地位や名誉が欲しかったわけじゃない。お金も重要ではなかった。
かといって、朝日とはもう一緒にいられないし、けれど朝日がオーナーである七色グループに居続ける事は自分の中では想像もつかなかった。
けれど、戻りたい場所なら、ひとつだけあった。