【完】さつきあめ〜2nd〜
「だから、もしもあたしが白で、ゆりさんが黒に見えてもそれっていつだってひっくり返るもんなんじゃないかなって思い始めてます。
だってオセロってそういうゲームだし!」
「あはは~っ!オセロかよ!」
「雪菜さんが言ったんですよ」
くッくッと無邪気に雪菜は笑う。
数日前は、不安を口にしていた彼女だったけど、いまはいつもの雪菜に戻ってくれたようだ。
わたしは、この人に恩がある。返しきれるか分からないほどの恩があった。
まだ出会ったばかりだけど、きっと雪菜がいなかったら、今の状況にはなっていなかったと思う。
大きな心を持っている彼女が、惜しみなくわたしの応援をしてくれて、協力をしてくれたから。だからわたしはONEでゆりと張り合えるくらいに戦えた。
自分の中で段々と大きくなっていく存在は、どこかキャバ嬢らしくない彼女が、もしかしたらわたしが目指すべき姿だったのかもしれない。
こんなに器の大きなキャストを、見た事はない。
「雪菜さん……不安にさせてごめんなさい」
口にすると雪菜は「何が~?」といつものようにとぼけた感じで笑った。
「あたしがしなくちゃいけない事、いつも雪菜さんがしてくれた…。
あたし…どこかで雪菜さんに頼りっぱなしで、雪菜さんがいれば何とかなるとか勝手に重荷にさせてしまっていたかと思います…」