【完】さつきあめ〜2nd〜
「レイさん…」

「本当に光が好きだったから
さくらちゃん、レイが七色グループに残ったの不思議だったでしょ?」

「それは…何でかずっと聞きたかったんです」

レイはゆっくりと話し始めた。

「光がレイに双葉に移籍した方がいいって言ってきたのを最初は嫌がったの。
だって双葉は客層的にも接客的にもレイが得意とするような店じゃなかったから。それでも光は双葉がいいって言ってきた。渋々働いて、由真ママや沢村さんに出会ったの。
由真ママはレイに色々な事を教えてくれたし、さっきも言った通り、この世界に入ってきて初めて尊敬出来るような女の人だったのね?
由真ママはレイの良いところを伸ばしてくれて、ダメなところを厳しく叱ってくれた。
そんな中で由真ママへの信頼が大きくなっていって、初めて争う事以外で働く事の楽しさを知ったの。
光はレイの初恋の人だから、七色を辞めて違うお店で独立するって聞いた時も本当はついていきたかった…。でも光を好きな気持ちと同じくらい、由真ママや双葉への恩義もレイにはあったんだ」

やっぱり、レイを由真ママと双葉が変えたんだ。
人は出会う人によって、生き方が変わる。
わたしがかつて信頼を寄せていた人によって、人生が変わったように。
由真ママも、またレイの特別な人になった。

「…光はそうなる事がわかって、レイさんを双葉に移籍させたんじゃないかな…」

わたしの言葉に、レイは大きな目をぱちくりとさせた。

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