【完】さつきあめ〜2nd〜

「涼、あたしね……きっとずっと朝日が好きなんだと思うよ。
これから先も、きっと誰かと付き合う事があったとしても、心のどこかに朝日がいると思うんだ。
でもそれって切ない事かもしれないけど、悲しい事なんかじゃなくて、あたしのこれからにとって必要だった時間だっていつか思えたらいいなって。
どんなに好きでも一緒にいられない時がある…。
あたしさ、ONEで朝日の為に頑張っていたけれど、あの勝負が終わってから、今度はもっと自分の為に何かを頑張ってみようと思ったよ。
夢なんて見つけられないし、あたしはまだ涼みたいに誰かの為にキャバ嬢である自分を捨てられない…。そんな中途半端な気持ちじゃ、結局は朝日と一緒にいたって同じこと繰り返しちゃうと思うんだよね。
だからお別れが必要な恋があるって知った。
あたしはあたしの立つべき場所で、自分の夢を見つけていきたい。自分の為に生きていきたい…」

ふぅと小さなため息をついて、涼は桜の木を見つめた。

「俺は、お前が幸せならそれでいいんだけどさ」

それ以上涼は何も言わなかった。
去り行く背中を見えなくなるまで見つめていた。
朝日の名前を口にして、あの日の事を思い返していた。


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