【完】さつきあめ〜2nd〜

ゆりとわたしがONEで売り上げ勝負をして、わたしが勝ってから数日経ってからの事だった。
あの日わたしは朝日から呼び出されて、久しぶりに昼間に朝日に会った。
その時に、これからの七色グループの事を聞かされた。

「光に七色グループの権利を全部譲ろうと思う」

呼び出されて早々切り出された言葉に開いた口が塞がらなかった。

「もちろん皐月はオープンする条件で
ダイヤモンドと七色を合併するっていう形で、俺は七色の権利を全て光へ譲ろうと思う。
これはお前がゆりに勝とうが負けようが最初から決めていた事だ」

あの時の朝日の顔はどちらかと言えばすっきりとしているような感じで、どこか清々しささえ感じる程だった。
それでも自分の中でくすぶっていた想いが揺れた。

「でも……そうしたら朝日はどうするの?」

どうするの?は色々な意味が込められていた。
仕事は?
権利を全て譲るという事は光がオーナーになって、朝日は普通の人になってしまう事だ。
どうやって生きていくの?なんて朝日に言うだけ無駄だったと今にして思う。



「そうだな。別に貯金はお前が思ってるよりあるし
今のマンションで暮らして行く事は出来なくなるけど、俺にとったらそれは結構どうでもいい事だったりする。
広いマンションで暮らしてもそれを持て余していくだけだし、高級な車じゃなくたって普通の車で運転は出来るし、高価な物を身にまとってたって空っぽな自分に気づかされるだけだし
別にバイトでもいいし、これからは自分が本当にやりたい事を見つけていきたいと思ってる」


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