【完】さつきあめ〜2nd〜
「レイさん…本当に光が好きなんだね…」

わたしは、なれるだろうか。
自分と気持ちが通じ合えない相手が、違う誰かと一緒にいる事を心から幸せに思えるのだろうか。
そこまで強い思いやりを、わたしはもてるのだろうか。

ふと、朝日の顔が頭を浮かんだ。

手を離したのは、わたし。傷つけて、苦しめたのもわたしだ。それでもわたしは朝日が好きだし、朝日に幸せになってほしいと願う。
けれど、実際それを目の当たりにしたらどうだろう。心から朝日の幸せを願えるかと聞かれれば、わからない。
違う誰かが朝日と笑い合い一緒にいれば、わたしは苦しむだろう。
自分で捨てておきながらそんな事を思うなんて、わたしはやっぱり変わってないし、自分勝手だ。
きっと朝日はすぐにわたしの事なんて忘れる。違う誰かを愛して、違う誰かと一緒にいる未来を、どういう気持ちでわたしは見つめるのだろう。

「さくらちゃん、その好きな人とは付き合ってるの?」

「ううん。付き合ってないよ」

「そっかぁ…」

レイはそれ以上の事は聞かなかった。
もしかしたら噂でわたしと朝日の事を何となく勘づいていたのかもしれない。
それでもレイはそれ以上の事を聞かなかった。そんなちょっとした気遣いが嬉しかった。
今は恋や愛だとかいう前に、数ヵ月の遅れを早く取り戻したかった。バースデーイベントを成功させて、七色グループで必要なキャストになって、朝日の夢を夢のまま終わらせないように。
それがわたしの、朝日への愛し方だと本気で信じていた。

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