【完】さつきあめ〜2nd〜
3月のバースデー期間。
復帰した月。
思ってるより早く流れて、あっという間に過ぎて行った。
去年と同様にお店に入ってすぐにバースデーの撮影が行われた。去年はTHREEで真っ白なウェディングドレスみたいなのを着たっけと思いながら撮影した。
お店では建前上22歳の誕生日。でも由真は、せっかく20歳になるんだから、と言って、着物の撮影を勧められて、真っ赤な着物に身を包んで、撮影した。
出来上がりは上々。
去年同様、大きなポスターがでかでかとお店のエントランスを占領した。

いつ見ても思う事だけど、撮影で笑顔を作る自分は偽りの自分にしか思えなかった。
それでもわたしにはやらなくてはいけない事は沢山あった。

キャスト同士での争いが起こりにくいように由真が配慮して、ヘルプに着いた席でも、ヘルプに着いてもらった本指名の女の子もお礼をかかさなかった。
この世界は礼儀が大切をモットーに掲げている由真。それ故に女の子同士の争いは実際に少なくて、働きやすい職場だった。
お客さんへの連絡もメールやメッセージよりも、電話が好ましいと言われた。直接声を聞いて営業して、お礼を言って、確かにその方が来店数も増えたような気がする。

由真目当てに来るお客さんを何人か紹介された。
その中でわたしを気に入ってくれるお客さんもいたし、気に入ってはくれなかったお客さんもいる。
由真の指名で来るお客さんは、シーズンズやTHREEでは別格と呼ばれていた小笠原クラスがわんさかいて、驚くような有名人まで来店していた。
すごいですね、と素直に言ったら、由真は誇らしげに、それでも「ONEはもっとすごい…」と呟いた。

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