【完】さつきあめ〜2nd〜
実際にわたしが目標とするゆりのお客さんはすごい人ばかりらしい。
名だたる有名会社の社長たちや、有名な芸能人、スポーツ選手。ちょっと危ない筋のお客さんまで。ゆりは本当にすごい、と由真も言っていた。
そんなすごい人たちに囲まれながらも、ゆりが一途に愛していたのは、朝日だけ。
七色グループでひたすらにトップを走る事が、ゆりの愛の証明だった。
実際にゆりが抜ければ、七色グループの存続さえ怪しい。
わたしが守りたい物を、守っているのは、わたしが守りたい人の過去の恋人だった。
何はともあれ、わたしはこのバースデーイベントを成功させる事に必死だった。
そしてふとした時に、今月は光の誕生月でもあるのを思い出す。
「さすがですね、さくらさん」
わたしの売り上げを感心したように沢村が見つめる。
「あたしが見込んだ女の子なら、このくらいはやってもらわなくちゃ」
その横で由真が当然と言った感じで売上表に目をやる。
わたしもこの仕事に就いてから、毎日欠かした事のない売り上げのチェックを双葉に入ってもしていた。
休んでいたブランクが嘘のように売り上げは伸びている。THREEと双葉じゃまず単価が違う。それでもわたしは入った時からいつだってゆりの売り上げと自分の売り上げを比べてきた。
どんな店の誰のバースデーでも、ゆりの売り上げが破られる事はなかった。それくらいわたしが目指す壁は高かった。