【完】さつきあめ〜2nd〜
パタリと雑誌を閉じる。
心の中にポッと灯りがともるような温かさが体を巡っていく。
同時に懐かしさがこみあげてくる。

カウンターの椅子を一周させて、店内を見つめる。
ここは、ラウンジ。
出来たばかりの。

暗めの店内に淡いオレンジの照明が光っている。

朝日が叶えたかった、さくらさんの夢。

ここは、当時朝日が七色グループで作ろうとしてくれていた、7つ目のお店。
カウンターの上に置いてある名刺には、グループ2つ目の桜の花びらが飾られたデザイン。
わたしの名前の上に、ラウンジ 文月と書かれている。

朝日とさくらさんの夢を、光が形として叶えてくれた。
オーナーとして光がこの5年毎日のように悩み、頑張っていた事を知っている。
元々与えられた環境だったからこそ、なおさら。
それでもこの5年間、光は七色グループを守って来たし、元々あったお店も守り、10店舗を超す大きなグループに成長していった。

その中で、ゆりは七色のトップでいる事を守り続けて
そして、今や雑誌の表紙を飾る程の有名人になっていた。
キャバクラ以外の仕事をこなしている彼女を見て、人を惹きつける才能はどんな場所でも開花するのだと知る。

そして、わたしも。


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