【完】さつきあめ〜2nd〜
わたしはあれからずっとシーズンズで働き続けて、夢を探していた。
そしてかねてから憧れだった雪菜のような人になりたい、と思った先に見つけた夢は
ナンバー1でもなくて、表立った仕事でもなくて、自分が誰かを育てていく事。
光から文月がオープンする半年前にママにならないかと話を貰って、OKの返事は比較的早くした。
いずれは、この世界で働く女の子たちを手助けする、裏方に回りたいと思った。
自分では、それが性にあっている気がする。
「おはようございまぁす!」
文月の扉が開いて、一直線に駆け寄ってきて、わたしへ抱き着いて笑顔を見せる
4歳の男の子。
大きな瞳をキラキラと輝かせて、「さくら!」とわたしの名を呼ぶ。
その笑顔にぎゅーっと胸が締め付けられる。
この世界にこんなに愛しい存在があるのかと思えるほど、小さな手がわたしの手をぎゅっと強く握りしめて
屈託のない笑顔をこちらへ向けてくれるのだ。
「こーら、翔!」
「翔~!!今日はプレゼントがあるの!!
じゃじゃーん!!」
大きなプレゼントの箱を見せると、小さな翔の大きな瞳が更に大きく見開いた。
そしてまた嬉しそうに笑顔を見せるのだ。
どうして子供はこんなに素直で、純粋な瞳を向けられるのだろう。