【完】さつきあめ〜2nd〜

「そんな事ないです!あたしは絶対にゆりさんに勝つ人間です!」

由真の言葉に少しだけ熱くなって言い切ったわたしを見て、由真は大笑いして、沢村は心底驚いた表情を浮かべた。

「ONEはお店自体が有名だから、新規のお金持ちのお客さんも沢山くるしチャンスも沢山ある。
双葉は新規が少ないってのが弱みだったんだけど、これからは新規も沢山入るようなお店造りしていかなきゃね。
あたしはその宣伝頭にレイとさくらちゃんを立てようと思ってんのよ。ふたりとも次世代を支えていくようなキャストだわ。
ね、沢村」

「はい!!それはもちろん!!」

「七色グループの顔自体を双葉にしたいとあたしは思ってんのよ。
それもなろうと思わなければ、絶対になれない」

由真の仕事に対しての高い志し。
わたしは今まで心のどこかでゆりに勝つのは無理だって思っていたんだ。
だけど、ここまで勝ちたいと思ったのは初めてだった。

誕生日当日。
春の足音がもうすぐそこまで来ていた3月の終わり。
桜の開花宣言が終わって、見事に花を開いたその月に、わたしは生まれた。
けれど雪深いわたしの故郷では、まだまだ桜は咲かない。さーちゃんと一緒に過ごしたあの街は、都会よりも少し遅く、5月に桜がいっせいに咲き誇る。
わたしが産まれた3月の終わりは大雪だったらしい。同じ日本なのに、こうまで過ごす気候が違う。上京して2年。4月春と呼ぶにはまだまだ慣れていなかったその年に、わたしは20歳になり、七色グループで2回目になる誕生日を迎える。

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