【完】さつきあめ〜2nd〜
遠回りをした。
道はいつも1本道ではなかった。1本道であろうとすればするほど、それていってしまって
色々な場所に迷ってしまっても、最終的なゴール地点が同じであるのなら、それでいい。
手繰り寄せた道の先に、必ずあなたがいるような気がする。
たとえあなたへ続かない道があるとしても、わたしは探し続けると思う。
それをこの世界にある言葉で表すとしたら、運命以外見つけられないんだから

「夕陽……」

抱きしめていた手を離して、朝日が真剣な瞳でこちらを見つめるもんだから

「ふっ」

「はぁ?!何笑っちゃってんの?!」

「不意打ちの本名はやばい。
誰にもずっと呼ばれてなかったから、焦る」

「これから先も俺以外に呼ばせないよーに!」

「何?いきなり俺様みたいになるの止めてよ。気持ちが悪いんですけど」

「お前って、照れると口が悪くなるよな。ロマンチックな事が好きなくせに」

「あなたに言われたくはないです」

照れると口が悪くなく事さえ、あなたと出会って知った自分の一部。

あなたは出会った時から、わたしの知らないわたしを見つけてくれた。

わたしが笑うと、朝日は照れくさそうに笑った。

その意地悪そうな笑いだって好きだ。

再び朝日がわたしの体を抱きしめて、小さく呟いた。

「最近小さな頃に光と話した話の続きを思い出したんだ」

「えー…何?」

朝日に抱きしめられた肩越し

風で桜の木が少しだけ揺れて

花びらがふわりと何枚か舞い散って行った。

それがまるで五月雨のようで

わたしは愛する人の胸の中で、ゆっくりと目を閉じて

彼の言葉に耳を傾ける。

柔らかい桜の匂いが鼻を掠めて

春の訪れを告げてくれた。







< 824 / 826 >

この作品をシェア

pagetop