【完】さつきあめ〜2nd〜
「大人の女性ー…なれたらいいんですけどね!!」
「でも出会った頃に比べたら随分大人になったと思うよ。でも君の本質的な部分は何ひとつ変わっちゃいないんだろうけど
誕生日、おめでとう」
グラスを合わせると、ちりんと涼しい音が室内に響く。
今日というお祝いの日に、小笠原はオーダーで作ったドレスを誕生日プレゼントとしてくれた。
小笠原の仕事関係のデザイナーさんが作ってくれたドレスは、今までわたしがお店で着ていたどのワンピースやドレスよりも高級な物で、色だけ’白で’とリクエストして、それ以外はお任せした。
数日前に出来上がったドレスは、去年着た白いロングドレスよりもずっと見栄えがする、わたしによく似合った物だった。
「君とゆりは、本当に対称的な存在だと思う」
「え?」
珍しく日本酒を飲んでいた小笠原は、小さなグラス越しにわたしを見つめる。
出会った頃と変わらない優しい瞳だ。
「ゆりはいつも好んで黒いドレスを着る」
「ゆりさんは本当に大人だし、あれだけ美しかったらドレスが負けちゃいますね」
黒。ゆりにぴったりだと思った。
身にまとう全ての高級品さえ、彼女を引き立たせる飾りに過ぎない。
誰にも負けない美しさを持っている彼女に、この深い夜の世界のような、深い黒はよく似合う。
「君と出会った時にね、家庭環境の話を聞いたじゃない」
「わたしの…」
「うん。さくらちゃんはとても真っ直ぐな性格をしていて、育ちの良さが滲みでてるような子でさ」
「そんな…」