【完】さつきあめ〜2nd〜

「僕ともよく趣味があったし、もうこれは育った環境のせいと言うしかないのかな。
さくらちゃんはとても品がある。そういうのお客さんに伝わってると思うんだ」

わたしは自分の育った環境が嫌いだった。
窮屈で、母親に縛られた環境。だからさーちゃんがとても羨ましかった。さーちゃんはとても自由で、何にも縛られないで生きているように見えたからだ。

「それを言ってしまえば、ゆりは君とはやっぱり正反対なんだよ」

「ゆりさんが?」

「うん、君とはきっと正反対の環境で生きてきたんだろう。
でもゆりの凄さは自分が手に出来なかった物さえ跳ね返そうとする強さだと思う。
恵まれなかったから、諦める、とかじゃなくて。誰も与えてくれないのなら、自分からつかみ取るって気持ちがすごい強い子だと思う。だからずっとONEでナンバー1でいれるんだと思う
それでさ、僕はそういうゆりの強さが好きなんだ」

小笠原から聞いたゆりの話と、朝日の生い立ちが重なる。
人は2種類の人間としか惹かれ合わないという。
自分とよく似ているか、自分とは正反対か。
さーちゃんもそうだった。朝日はきっと、自分と似たような傷を持つ人間が好きなんだ。わたしには分かる。
けれど…わたしと朝日は、きっとどこまでいったって分かり合えないんだ。

自分の環境が嫌いであっても、わたしはずっと守られて生きてきたのだから。
同じものを分かり合えない。どこまでも重なり合う事がない、わたしと朝日は。

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