【完】さつきあめ〜2nd〜

「誕生日おめでとう。
本当に…短い髪もよく似合うわ…。さくら大人っぽくなったね」

「綾乃ちゃん、ありがとう」

「忙しいのにわざわざ来てくれてありがとう。この卓なら気にしなくて平気だから、さくらを待ってる沢山のお客さんのところに行ってあげて?」

「綾乃ちゃん…。
全然着けないのに来てくれてありがとうね!
美優ちゃんのラストの日はあたしも休み取ってるからTHREEに行った後シーズンズに行くからね!
はるなちゃんとのW指名で」

「あら、はるなとW指名なんて滅多にないから新鮮だわ。嬉しい。
ありがとうね、さくら」

そして綾乃は柔らかく微笑んだ。

今日は主役だから、そう言って各卓のお客さんがこぞって高級なシャンパンやワインを空けてくれた。
今日だけは特別。テーブルに着いても数分で抜けてしまうわたしに不満を言うお客さんはいなかった。
グラスに1杯口をつけては付け回しに呼ばれる。慌ただしくて、ひとりひとりとじっくり話してる暇もない。申し訳ないな、と思いながら、付け回しをする沢村はもっと申し訳なさそうな顔をして「ひとりひとりのお客様にゆっくりと着かせられなくてごめんなさい」とわたしに頭を下げる。
心がホッと温まる。

由真も由真で忙しそうにわたしの誕生日をお祝いに来てくれたお客さんひとりひとりに挨拶に回っていた。レイはライバルだと言った。それでも嫌な顔ひとつせずにわたしのヘルプに喜んで申し出てくれた。

「レイさんです」

「おじゃましまーす!
今日はさくらちゃん大忙しだからレイで我慢してくださいね~!」

若くて華やかで可愛らしい。わたしとは全く正反対の彼女は、人懐っこく笑ってその場を和ませて、わたしのお客さんにもとても評判が良かった。
卓を離れる時、レイはわたしの耳元で小声で呟いた。

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