壊れそうなほど。
「今日、すっごい楽しかったね」
「うん、楽しかった」
外はすっかり肌寒い。手を繋いで、体をぴったり寄せて、ユキの家までのんびり歩く。
外灯に照らされて伸びる、わたし達の影。おそろいのちょんまげがゆらゆら揺れる。
足の痛みはいつの間にか引いていた。胸の痛みも。ユキの手に触れた瞬間に、そんなの吹き飛んでしまった。
「ユキのアドリブかっこよかった! あれ、聴いたことある。なんの曲だっけ」
やがて、昨日の夜も来た白とグリーンの小さなアパートが見えてきた。
「カウボーイなんとか?」
「なんとか?」
「んー? ダメ、忘れた」
ユキが鍵穴に鍵を差し込む。すぐに開いた紺色のドアから「おじゃましまーす」と挨拶しつつ、中に入った。
あーあ、また来ちゃった。