壊れそうなほど。

不安になるのは、後ろめたいからだ。昼間あんな風にケンカして「逃げんな」と怒ってもらったくせに、それでも怖くなってしまう。

こんな、堂々と二股かける最低な女なんて、いつ見限られてもおかしくないもの。でも……。

もう寝てしまったかもしれないユキの薄い唇に、自分の唇をそっと押し当てた。

「沙奈ー」

ユキが目を開けた。部屋は真っ暗だ、でもとっくに目が慣れて、ユキの顔ははっきりと見える。

「ダメって言ったよね?」

吸い込まれそうに真っ黒な瞳が、少し困ったように弧を描く。

「ごめ…」

謝ろうとしたら、その唇を塞がれた。

ユキはわたしの髪を撫でながら、口内にそっと舌を侵入させる。その温かい舌に応えると、彼はフッと鼻で笑って、わたしの舌をいやらしく絡め取った。
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