壊れそうなほど。
(8)

沙奈と連絡が取れない──。

こんなことは初めてで、酷く動揺した。勿論すぐに応答がないことは今までもあったが、それでも2、3時間もすれば何らかのレスポンスはあったのだ。

なのに、こんな時間になっても、彼女からは何の連絡も来ない。もう夜中の1時だ。

まさか事故にでもあったのでは、と過保護な心配を一瞬するも、そうなれば彼女の両親から婚約者のおれに必ず一報あるはずだと、すぐに思い直した。

じゃあ何故、連絡がない?

……いや、落ち着こう。

今日は大学祭も3日目だ、野外ステージもこなした沙奈は、きっとすっかりエネルギーが切れて、もう寝てしまったのだ。

乱れた気持ちを無理やり押し込むように、体を布団に潜り込ませる。

そうしないと、こんな真夜中に今すぐチェイサーを走らせて、沙奈の家まで行ってしまいそうだ。
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