壊れそうなほど。

あんなやつ、どうでもいい。

初対面だというのに敵意を剥き出しな優輝斗には面食らったが、まあ「愛想がない」「全然可愛くない」と沙奈から聞いていた通りだ。

ギターは思わず唸るほどの腕前で、ステージ上では俺を見ろと言わんばかりの自信満々な表情で、派手にパフォーマンスをしていた。

……きっと、ただのふてぶてしいやつだ。取るに足らない。

もしも何かを心配するなら、あのベースのイケメンの佑介くんの方だ。彼とはかなり仲がいいらしく、二人で食事するなどは日常茶飯事。

そもそも沙奈は男友達が多いのだ、いちいち心配していたら身が持たない。それに、彼女を束縛する鬱陶しい男にはなりたくない。

大丈夫だ、沙奈の彼氏はおれ。彼女はおれの婚約者だ。

眠れない夜。

羊を数えるように大丈夫を何度も唱えた。
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